鬼子捜し(二)

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鬼子捜し(二)

 山へは間もなく辿り着いた。  木々の間を、息を殺して進む。途中、何度か小動物を見かけたが、目的の者にはなかなか出会えない。 「でも、道を歩いていた時より、得体の知れない気が濃い……ですよね?」  少々自信なく言う玉瀬に、師はあっさりと同意した。 「ああ、間違いなく。近くで俺たちの様子を窺ってるかもしれんぞ」  そう言うや、目を閉じた彼は、少しの後に頷いた。玉瀬にそっと耳打ちしてくる。 「いいか。あの辺りをよく見ておけよ」  どうやら、晴道は鬼子の潜む場所を絞り込んだらしい。  他にも生き物のいる山中で、ひとつの気配を正確に探るのは難しい。それぞれの気が溶け合うからだ。多くの香りが混ざると、元の匂いが分からなくなるのと同じで、玉瀬はまだ不得手であった。
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