1.セピア

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椎名(しいな) 花梨(かりん)は、俺が中学2年生のときに引っ越すまで、隣の家に住んでいた。いわゆる幼なじみというやつだ。 小学生の時は、男勝りな性格と抜群の運動神経で、近所の子どものボスに君臨していた。 友達が泣かされたら年上相手でも食ってかかるので、隣で見ていた俺はしょっちゅうひやひやしていたような気がする。 もっとも、止めようはしなかったけど。 勝ち気で勢いづいたあいつを止められる人なんて、あいつのお母さんくらいだ。 中学生になると、さすがに先輩相手に無茶はしなくなった。 でも負けず嫌いな性格は相変わらずで、入った陸上部では、男子部員にも負けないくらいがんばって、実際活躍もしていた。 そして、案の定と言うべきか、女子にめちゃくちゃモテた。 サラサラの黒髪ショートヘアに、すっきりとした切れ長の目、すっと通った鼻、いつも笑みをうかべた唇。加えて、競技中の真剣な表情と、美しい走り姿。(全部、俺が入ったサッカー部のマネージャーたちが言っていた。ほめすぎじゃないか?) そんな様子で、バレンタインにはどっさりチョコをもらっていた。 おてんばな本性バラしてやろうか、なんて思ったこともあったけど、結局やめた。 俺にも、やっと春がめぐってきたのだ。
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