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引っ越すと父さんから聞かされたのは、6月中旬。隣の県に住む知り合いのサーフィン用具店を引き継ぎたいとのことで、俺も母さんも反対したけど、結局父さんが押し通した。
青木(そのころには、もう「くるみ」と呼んでいた気がする)に告げると、泣き笑いの表情で「がんばろうね」って言ってくれた。
何をがんばるのか分からなかったけど、うなづいた。大事なことだと思ったから。
後で花梨に教えてもらったけど、「わかってあげなよ鈍感!」と、罵倒がついてきた。
最後まで、あいつに怒られてばかりだった。
でも、最後に会った時は、なんか様子が違っていた。
指切りしようと言った時のなんとも言えない表情。
夕立にあって、走り出した時とっさにつかんだ手の感触。
見送りに来なかった理由。
今なら分かる。あいつはきっと…。
いや、もう終わったことだ。言い聞かせるように思ってから、俺はメッセージを送った。
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