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「じゃ、おやすみ」
彼は、ちゅっと私にくちづけると、握っていた手を離す。
私は助手席のドアを開けて、彼の車を降りる。
「優くん、ありがとう。また明日ね」
小さく手を振り、彼の車を見送ると、私は、ふぅぅっと小さなため息をもらす。
今日も何も言ってくれなかったな……
そんな落胆を胸に、私は階段を上り、アパートの2階にある自室へと戻る。
私は、現在29歳、友人はこの1〜2年でバタバタと結婚していった。
優くんとは付き合ってもう3年になる。
私もそろそろ……と思うけれど、優くんは何も言ってくれない。
いっそ、私からプロポーズしちゃう?
でも、それでもし断られたら、もう立ち上がれない。
私は、日々、そんな葛藤を抱えながら、デートのたびに、今日はプロポーズをしてくれるんじゃないかと淡い期待をしている。
そして、毎回、今日のようにその期待は見事に打ち砕かれるのだ。
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