2.行ってしまう彼への思いを断ち切るように、私はそれを噛み切った

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「忘れないで。純が困った時は、私が側にいること」 「そうだったね。四葉ちゃんはいつも、僕を助けてくれた。子供の時から……」 「そうよーずーっと、見てきたんだから」 「ありがとう。四葉ちゃんがいなかったら、こんな一生に一度の幸せ、こなかった」 私は、涙が出そうになるのを堪えながら 「あれ?この蝶ネクタイ……少し糸が……」 糸がほつれて出ていた。 まるで、私の取り残されら想いのようだ。 「え?ほんとに?どこ?」 「ごめんね。上手く縫製できてなかったみたい。やっぱり素人が手をだすべきじゃなかったかな……」 「四葉ちゃんが作ったサムシングニューを持つって決めてたから、これがいい」 「……花嫁の父親が娘の為にドレス新調したところが由来ってネットにあったけど」 「四葉ちゃん、お父さんみたいだもん」 「……せめてお母さんじゃない?」 「あのね、この蝶ネクタイ、ほんっとに嬉しいんだよ」 「ははは。傷だらけになっても頑張って良かった」 「今ハサミないから……」 私は口に糸を含み、自分の歯でそれを噛み切った。 行ってしまう彼への想いを、断ち切るように。
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