【ショート・ショート】俺様でナイト!

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そして、彩佳の結婚生活が3年目に突入しようとしていた頃だ。 精神的な限界が来たのか、彩佳は旦那さんが普段から愛飲している野菜ジュースに毒物を入れ、旦那さんの殺害に至った。 が、ずさんな犯行であった為、警察が「お迎え」にやって来た結果、彩佳はあえなく逮捕された。 そして、彩佳の名前を私はニュースやワイドショーなどで、幾度も目にする事となった。 『今回、逮捕された森下彩佳容疑者ですが、何でも常日頃から「俺様な男が大好き」と周囲に言っていたそうですねぇ』 ワイドショーのコメンテーターが、その場しのぎの(おもんぱか)った表情を貼り付けながら、会った事もない彩佳に対して自らの見解を述べていく。 そのワイドショーのコメンテーターに対して、私は「そうだよ」と聞こえもしない相槌をテレビの画面に向かって呟いていた。 テレビの電源を切り、スマートフォンにある婚活サイトのアプリをクリックすると、数十人の男から下心丸出しのメッセージが送られてきていた。 ひとまず年収でメッセージを絞り、直感で幾つかのメッセージを振るい落とすと、私は残ったメッセージの一つ一つに次に繋げるような返信をしていく。 気がつけば、33歳。 本気で結婚を考えないと、さすがにまずい年齢になってきた。 しかし、年収だけで絞ると、たとえイケメンであってもメッセージを送信してくる男はどこか精神的に難のある男ばかりであった。 「『俺様な男』とか簡単に言うけど、実際にそういう男とやり取りしたり会ったりしてみたら、大抵ただ『ワガママ』なだけなんだよね……」 スマートフォンを見つめた私は眉を寄せ、独りごちる。 そして、いつか自身を「迎え」に来てくれるナイトの登場を夢想しながら、私は流れ作業的にクセのある男どもに対してメッセージを一つ一つ送信していった。
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