25人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、彩佳の結婚生活が3年目に突入しようとしていた頃だ。
精神的な限界が来たのか、彩佳は旦那さんが普段から愛飲している野菜ジュースに毒物を入れ、旦那さんの殺害に至った。
が、ずさんな犯行であった為、警察が「お迎え」にやって来た結果、彩佳はあえなく逮捕された。
そして、彩佳の名前を私はニュースやワイドショーなどで、幾度も目にする事となった。
『今回、逮捕された森下彩佳容疑者ですが、何でも常日頃から「俺様な男が大好き」と周囲に言っていたそうですねぇ』
ワイドショーのコメンテーターが、その場しのぎの慮った表情を貼り付けながら、会った事もない彩佳に対して自らの見解を述べていく。
そのワイドショーのコメンテーターに対して、私は「そうだよ」と聞こえもしない相槌をテレビの画面に向かって呟いていた。
テレビの電源を切り、スマートフォンにある婚活サイトのアプリをクリックすると、数十人の男から下心丸出しのメッセージが送られてきていた。
ひとまず年収でメッセージを絞り、直感で幾つかのメッセージを振るい落とすと、私は残ったメッセージの一つ一つに次に繋げるような返信をしていく。
気がつけば、33歳。
本気で結婚を考えないと、さすがにまずい年齢になってきた。
しかし、年収だけで絞ると、たとえイケメンであってもメッセージを送信してくる男はどこか精神的に難のある男ばかりであった。
「『俺様な男』とか簡単に言うけど、実際にそういう男とやり取りしたり会ったりしてみたら、大抵ただ『ワガママ』なだけなんだよね……」
スマートフォンを見つめた私は眉を寄せ、独りごちる。
そして、いつか自身を「迎え」に来てくれるナイトの登場を夢想しながら、私は流れ作業的にクセのある男どもに対してメッセージを一つ一つ送信していった。
最初のコメントを投稿しよう!