1話 彼と彼女のプロローグ

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「……う」  ジーノが目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。  木が沢山ある。ぼんやりとそう思った。何故自分はそう考えた? わからなかった。  正確に言うと、木製の家具に囲まれた一室だ。  ふわふわの布団に、キルトの布で飾られた暖かい部屋。  自分とは、随分縁遠いように感じるそれらを眺めていると、家主であろう少女がぴょこんと顔を出した。 「おはよう! コーンスープとココアとどっちがいい?」 「え?」  温かい匂いがする。鼻腔(びこう)をくすぐる香りは腹部をきゅうっとさせた。  でもそれはなんだ?  戸惑っているジーノをみて、不安げに顔を曇らせた少女は、はっと思いついたように笑った。 「私はアイン・フィリーラ・ファルンテイルていうのよ。貴方のお名前は?」  軋む 「……っ!」  何故だろう。ぽろぽろと、目から水が流れた。
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