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──嘘みたいだ──。
眠っているこの子が自分と紫葵との間に生まれた命だなんて──。
「まだ見てるの? 寝顔なんてそんな変化ないよ?」
「1年と3ヶ月分見てる」
寝室に置かれたベビーベッドの中ですやすやと眠り続ける我が子を花瀬は穴が空くほど眺め続けた。
「明日も明後日も凛は消えてなくならないよ」
「でも今日の凛は今日だけだから、目に焼き付けたい」
「慧くんって思ってたより親バカ? ねぇ……でもさ、いい加減俺のことも見てほしいんだけどっ!」
いい加減娘ばかりに視線を奪われることに腹が立ったのか、見ていたスマホを枕元に投げると紫葵は花瀬の背中に勢いよくしがみつき、頭や耳やうなじに何度も何度もキスをした。
余りにもくすぐったくて花瀬はすぐにギブアップすると、身体の向きを変えて愛しいΩを抱き上げベッドへ押し倒す。
嬉しそうに微笑む紫葵のピンク色の頬を撫で、花瀬は愛しそうにその目の奥を覗き込んだ。
「綺麗になったね……ずっと可愛い仔猫みたいな顔してたのに。ママになったからかな?」
「ママって呼ばないで、俺は慧くんのママじゃないんだからねっ。俺の気持ちはあの付き合いたての頃のまんまんなんだから」
「俺だって同じだよ──」
付き合いたてのあの頃と変わらないその細い身体を確かめるように、花瀬は大きな手でゆっくりとそのラインをなぞる。
それだけで紫葵は瞳を潤ませ、いやらしく腰をうねらせた。
「紫葵ってばえっちだな……」
「だって、ずっとずっと触ってもらえなかったんだもん……当たり前でしょ?」
紫葵は熱くなった身体をわざと花瀬の股間に擦り付けて花瀬を誘う。
「慧くんだって……もう、こんななってる……」
細い指でボトムの上からなぞられ、花瀬は腰が浮いた。
「どうしよう──俺、紫葵のこと無茶苦茶にしそうで怖い……」
「いいよ──慧くんは俺の番なんだから……慧くんがしたいようにして……俺はそれだけで幸せ……」
見た目は天使みたいに可愛いのに、口からこぼれる悪魔のようなその恐ろしい誘惑に花瀬は全身の骨を失った気がした。
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