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ep.13
「……中国にもやっぱ、えっちなお店とかってあるの?」
紫葵は花瀬の首筋を甘噛みしながらどことなく奥歯に物が挟まったような言い方をした。
「何それ」
「だって、2年って……長い、から……」
自ら口にしておきながら、紫葵は嫉妬と悲痛が重なって重くなった睫毛を伏せた。
そんな可愛げのある表情を見ることすら久しぶり過ぎて、花瀬は口元が緩みそうになるのをどうにか堪えた。
「──紫葵は?」
「俺? 俺はもう凛に忙しくってそんな暇なかった。けど、最初の何ヶ月かは一人でしてた、よ?」
「一人でしてるとこ見せて欲しかったなぁ〜」
「エロオヤジッ」
「だって、そんなの聞いたらすごく損した気分。紫葵が俺の知らないところでそんないやらしいことしてたなんて……」
「もうっ、勝手に想像しないで!」一人妄想に耽る花瀬の胸を紫葵は赤い顔をして叩く。
「そーいう慧くんは? 一人でシテたんですか?」
「してたよ」
その言葉に何故か紫葵は驚き、思わず固まる。
「──何?」
「ううん、なんか──想像できなくて。慧くんはそういうのしなさそう……」
「紫葵の中の俺ってどういう男になってんの? それに知ってるだろ? 俺がエロオヤジなことくらい」
「ふふ、そうでした」
紫葵は照れながらも柔和に微笑むと、愛しい男へ口付ける。会えなかった日数分、寂しくて泣いた涙分──何度も何度もその唇を味わった。
「愛してるよ……紫葵」
紫葵は花瀬の首に腕を巻きつけ、堪えていた涙をその胸へと溢す。声を失った紫葵の唇を花瀬は優しく啄み、その中もゆっくりと味わう。次第に激しくなるそれに紫葵は息を乱して甘く鳴いた。
「可愛い──もっと聞かせて、紫葵……」
「えろ、おやじ……」
その言葉に花瀬はくしゃりと愛しげに笑うだけだった。
紫葵は全身が震えた──。
ずっと触れることのできなかったその指やその肌、全ての感覚に気が狂いそうだった──
こんな感情自分の身体のどこに眠っていたのだろかと思うほど強くて大きくて熱い波──
裸になって抱き合うだけで涙が出る──
はじめてのセックスみたいに頭の中が真っ白になる──
もう何回も繰り返し抱き合ったのに──
もう何回も繋がりあったのに──
「……抱き締められるだけで……なんか、イッちゃいそう……」
吐息混じりに紫葵は潤んだ瞳で切なそうに囁く──
「そんなの……俺も同じだよ……」
幸せそうに微笑む紫葵に花瀬は何度も口付け、紫葵と同じくらい全身を襲う熱い波に吐息を漏らした──。
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