AP学部

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「もう終わりですか……」 「ああ、終了だ。結果は3日後に出るからまたここに来て   くれればいい。だがその間絶対守って欲しいことがある」 「何ですか?」    疑問に思う憲治の前に面接官はビニール袋を出した。   中身を彼に見せる。それはラテックス製の手袋だった。    「ここに戻ってくるまでの間、決して素手で物を触らないことだ」    突拍子のない面接官の提案に憲治は混乱する。      「一体どういうことですか?」      「同意書になかったかい?AP適応試験を受けると副作用    が出ることがあるんだ。素手で物に触ると物に宿っていた    残留思念が精神に影響を与えかねない」      「残留思念ですか……ハハハそんな馬鹿な」     急にオカルトめいた話が飛び出した。真顔で説明する    面接官が急に滑稽な存在に思えた。    「最初はみんなそんな反応をするんだ。でもこの業界    に入ったらすぐに慣れるよ。なんせ今やっている国家主導    のプロジェクトは高次元存在へのアクセスなんだからね」        面接官は朗々と語った。AP学部卒業者が重宝される    のには訳がある。高次元存在との交信――平たく言えば    神様との対話を政府は行っていてそのための人材    をこの方法で集めているのだ。     現に対話をすることで生まれた新技術で長らく問題だった    地球温暖化が解決できた。これからは神様と相談して世界    を作っていく時代に来ていると憲治は授業で教わった。    「分かったかい?絶対に手袋を外さないこと」      「大丈夫ですって」       憲治は胸に手を当てて宣言した。これはいわゆる     試しなんだな、と憲治は考えていた。これで手袋を     外したら不合格とかになるんだろう?でも外したか     どうかなんて確かめようもないだろうしな……まあ    楽勝だろう。憲治はタカをくくっていた。      憲治は目の前に置いてあった手袋をはめると部屋    を後にした。医療スタッフからの精密検査を受けたあと    彼は家路につくことにした。       
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