AP学部

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         面接官は喜色を浮かべ憲治の肩を叩く。       「適応試験での効果は3日で消えてしまうんだ。    でももう一度あの光を浴びたいのなら、この書類に    サインをしなさい。それで君は合格だ」                面接官はクリアファイルに挟まった書類を    ペンと一緒に憲治の前に出す。憲治は迷うこと    なくペンを取るとすらすらとサインを書いていく。    「確認したよ。これで今日から僕たちの一員だ」       「よろしくお願いします」          憲治は固い握手を交わす。憑き物が落ちたか     のようなすっきりとした顔をしていた。       「失礼します」           憲治は深々と一礼をすると部屋を出ていった。    残ったのは面接官唯1人だ。面接官は懐にしまって    いた携帯を手に取る。      「17番は合格です」        「そうか、よくやった。被験者の様子はどうだ?」        「問題ありません。薬も抜けてます」            面接官はにんまりと笑みを浮かべる。       「結果は上々のようだな。どうだ使えそうか?」        「ええ、彼は完全に信じ切っています。優秀な  工作員になりますよ」            相手は面接官の上司だった。これで自分    の査定がさらに上がる。面接官は小躍りしたく    なるほど嬉しかった。   この仕事は演技力がモノをいう。幻覚剤を     心臓停止薬と思わせる。手袋をはめることで     鋭敏になった感覚を和らげさせる。水に利尿     剤を混ぜることで幻覚剤の抜きを早くして禁断     症状を起こさせる。あとは自分の話術次第だ。            また1人優秀な若者を迎え入れることが出来た。     彼が光を欲する限り国家のためにその身を捧げて     くれるだろう。人材はいつも不足しているのだ。     「では次の人」            面接官の仕事がまた始まる。                 <終>
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