だから言ったじゃん。

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互いに大学もバイトも休みの昼下がり。 近所にラーメン屋がオープンした、と知り、光は彼氏の晶と一緒に行列に並んでいる。 同棲しているマンションの郵便受けに、チラシと共にオープン記念として期間限定の餃子一皿無料券もチラシに留められ入っていたらしい。 「見て見て!光!ラーメン屋がオープンするんだって!行ってみようよ」 「へえ、餃子一皿、無料券かあ!行くっきゃないね」 いざ、チラシを手に店へと着くと、既にズラリ、行列が出来ている。 「並ぼ、晶」 「うん!」 暫し、 「魚介系豚骨かあ、楽しみだなあ」 チラシに載ったラーメンの写真を見て、浮き足立っていた晶だが、三十分ほど経過した辺りから、行列に嫌気がさしてくる。 「...まだかなあ」 「待てば待つほど、美味しさも二倍増しだって」 晶が誕生日の日、世界的に有名なネズミやその恋人などのキャラで有名な遊園地に行ったときもそうだった。 移動中の電車の中で、 「楽しみだなあ!今日中に制覇できるかなあ」 「今日中に制覇は無理だろうけど、楽しもうよ」 「うん!」 そんな笑顔も束の間。 数時間待ちのアトラクションに晶は次第に苛立ちを募らせていった。 「待てば待つほど、楽しさも二倍増しだって」 晶を窘め、 「行列待ちで別れるカップルも多いって言うけど、その通りなのかもね!」 「そんな怒っても順番は早まらないよ?」 怒りを露わにする晶に、 「晶、後ろ見て」 晶は光に促され、眉間に皺を寄せたまま振り返る。 「だったら、他のアトラクションに並ぶ事にして、順番待ちの人に場所、譲る?」 自分たちの後ろにも果てしなく長い行列が出来ている。 「それとも動画でも見て、時間、潰す?」 「...動画見る」 二人で光のスマホであれこれと動画を見ていたら、呆気なく順番が来た。 「あー!待ってて良かったー!」 「面白かったね!」 「うん!」 あの遊園地よりは行列は少ない。 「餃子、無料券、無駄になっちゃうけど。そんなに待てないなら仕方ないか。後ろの人に順番譲る?動画でも見て、時間潰す?」 「...動画見る」 不機嫌だった晶にスマホを差し出し、 「なに見る?」 暫し、食い入るように動画を見ていたら、順番が来た。 「ほら、行こっ」 動画の続きが気になり、名残惜しそうな晶と共にラーメン屋に入る。 空いたテーブルに向かい合い座り、 「やっぱり、とりあえずはラーメンでしょ」 「だね」 早速、店員を呼び、注文を終え、慌てて晶がチラシを見せる。 慣れた手つきで店員は引換券を外し、10分も待たずにテーブルに二杯のラーメンとおまけの一皿の餃子が来た。 満面の笑顔で、 「いただきます!」 晶は手を合わせ、チュルチュルとラーメンを啜り、 「はあ!美味い!来て良かったー!」 「並んだ甲斐あったね」 「うん!」 行列に並んでる間、 「ああ、もう!待ちくたびれた!」 と、一時はあんなに怒り心頭だったのに単純だなあ、と向かい合って座る光はスープをレンゲで掬いながら、ラーメンを前に満足げな晶を眺めた。 「美味しかったー!また来ようね!光」 「うん」 また行列に並ぶことになるかもしれないことを晶はすっかり忘れてしまっているかのよう。 また晶はイライラするのかなあ。 とりあえず、その時はまた、動画を見せて気を散らせよう、と光は肩を並べながら晶に笑顔を向けた。
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