嫉妬

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「ヒロト、毎日何やってんだよ!同じことばっか繰り返して!」  ケイタは、自分の部屋に来たヒロトと会うなり怒っていた。ヒロトは俺の恋人で、会社の同期だ。入社式で出会って意気投合し、寮のお互いの部屋で部屋飲みをしているうちに深い関係になっていった。最近では、ほとんどどちらかの部屋で過ごすのが当たり前になり始めていて、寮を出て同棲しようか、なんて話も出始めている。 「だって、わからないことはちゃんと説明しなきゃいけないだろ?そんなこと言って、ケイタだって鼻の下を伸ばしていたじゃないか!」  二人が何を言い争っているかというと、今年の新入社員でヒロトの部署に配属された後輩のレイカのことだ。レイカは、配属以来、猫なで声の舌足らずな口調でヒロトに近寄って、変わり映えのしないことを毎日尋ねているのだ。隣の部署のケイタの席から丸見えのところで毎日繰り返されるその光景に、ケイタはとうとう業を煮やしてしまった。 「伸ばしてないよ!いつもほとんど同じこと聞いてくるんだから、突き放せば良いだろ?」 「何…ケイタ、嫉妬してんの?」 「…気付くの遅すぎだろ?ヒロトは、俺の恋人なんだから、誰にも取られたくないんだよ。お前、レイカが下心ミエミエなの、わかんないのかよ」 「ふうん…」  徐にケイタを抱き寄せたヒロトが、少し乱暴にケイタのネクタイを解いて、口づけた。触れるだけのキスなのに、もうケイタの身体の芯が熱くなり始めている。 「俺がそんな手に乗るって思ってんの?じゃ、身体に教えた方が良いかな…俺にはケイタしかいない、って…」 「…望むところだ」  お互いのシャツを脱がせあって、汗ばんだ肌を触れあわせると、ケイタはこれからヒロトと味わう快楽を想像して背筋がゾクッとした。  もう、レイカのことなどすっかり忘れてしまった二人は、互いを貪ることしか眼中になかった。そんな、熱い夜が更けていく。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!