希望に誓え、青春

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希望に誓え、青春

 この高校高に入学して三日目、体育館で部活紹介を見た。  俺は高校進学を機に地方から上京してきた。たまたま親の仕事先が東京に転勤になるというのもあって、中学の時から東京の高校の受験に向けてがんばっていたのだけれども、それももう随分と昔のことのように思える。  地元を離れるにあたって、中学時代までの友人達はたまには連絡をくれだとか、たまには遊びに来てくれだとか言っていたけれども、いざ地元を離れてしまうとまだ学生の身としては地元に戻って友人達に会うのは難しいようなことのような気がした。  部活紹介を見ながらぼんやりとそんなことを考える。そういえば、中学の時は運動部ばかりで文化部があまりなかったけれども、俺が入った東京の高校は随分と文化部が多い。こんなに文化部があるのかと、俺は驚かずにはいられなかった。  全員が全員部活に入らなくてはいけないわけではなかったけれども、俺は美術部に興味を持った。中学の時に、美術室で絵を描いている美術部に対して抱いていた憧れが甦ったのだ。  けれども、部活紹介の内容を聞いて、美術部は敷居が高いなとなんとなく思ってしまう。石膏のデッサンをやっているだとか、都の美術展に出展しているだとか、そんなことを言われると、とてつもなくクオリティの高いものを求められるのではないかという気になってしまったのだ。  美術部……気になるけど、俺には無理かな……そう思っているうちに、部活紹介は漫研へと移る。この学校の漫研は、漫画だけでなく小説の扱いもあるということで、どうやら漫研と文芸部がひとつになっていて、便宜上漫研という名前になっているもののようだった。  漫研。俺が中学の時にはそんな部活はなかった。漫画を描くということには、美術部以上に興味を惹かれた。  漫研の活動内容としては、約二ヶ月に一回くらいのペースで、各クラスに配る部誌を作るということで、しっかりとした活動内容があるようだった。  いったいどんな部誌を作っているんだろう。漫研の紹介を聞いているうちに、俺の興味は完全にそちらへと向いていた。  漫研の部誌は図書館にもあるようなので、部活紹介が終わって、ホームルームが終わったら図書館に見に行ってみよう。どんな本を作っているのか、漫研に入ったら俺も本を作れるようになるのか、そんなことを考えると、とても心が弾んだ。
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