隙間道の女の子

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 ビル街は、薄暗い隙間が多い。  都会育ちの俺は社会人になってからも生活圏を大きく変えることなく、毎日毎日雑踏の中へと足を運んでいる。  見慣れた風景。知り尽くした道なり。  都心は目まぐるしく変化していくが、少し離れたビル街は子供の頃から何も変わらない。  この街は俺の庭だから。  そんな言葉を言いたいがために、気まぐれでどこへでも行くし、当てもなくふらふらと歩きまわったりもしている。  でも、そんな俺でも、もう何年も立ち寄っていない場所がある。  俺の実家近くにある、日の当たらない路地。  もっと細かく言えば、その路地に面しているビルとビルの間。  隙間道と俺は呼んでいた。  道と言えるほどのスペースはないけれど、子供の頃に知り合った友達が、そこを通っていたからそう呼んでいる。  忘れたいけど、どうしても忘れられない、奇妙な友達だ。
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