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「でも、それがどうして、殺したかも?なんてことになるの?」
しばらくの沈黙。
「軽蔑されるかもしれないけど…」
「しないよ、言っていいよ」
「…さっさと死なないかな?って思うようになった…」
「……そっか」
「外を歩き回ってどこかで死んじゃってくれないかなって、そんな怖いこと考えてしまう私ってどうかしてるよね?酷い嫁だよね?」
「それだけ追い詰められてたんだよ。でも実際殺してないでしょ?」
「そうなんだけど…。でもね、昨夜もね、夜中に出て行く気配がしたんだ、部屋の襖を開けるとチャイムが鳴るようにしてあるからね。で、いつもはまず引き止めるんだけど、昨夜は引き止めなかった。見つからないようにドアの隙間からばあさんが出て行くのを見てたんだ…」
「うん、それで?」
「このまま帰ってこなければいいとか考えてしまって…追いかけなかった…」
「それでも、さっき電話してきたじゃん?心配になったからでしょ?」
「そう。私、いつのまにかうとうとしてて、朝になってもやっぱりばあさんは帰ってきてなくて。部屋を見たらその、手紙みたいなものがあって…」
『れいちゃんごめんね』
「たまになんだけど、たまーに、ばあさん正気に戻る時があるんだよ。それはその時に書いたんだと思う。そして、昨夜も家を出る時は正気だったんだよ、さっき思い出したんだ」
「なにを?」
「いつもは左右不揃いのサンダルとか、裸足とか、とにかくめちゃくちゃな履き物で出て行くのに、昨夜に限って、靴箱から自分のお気に入りの靴を出して履いて出て行った、ちゃんと靴箱も玄関も閉めて。普段は全部中途半端でそんなにキチンとしてないんだよ」
「……それって」
私は言葉を失った。
「わかってて、自分からここを出て行ったんだと思うんだ、そして死に場所を探して歩き回ってるんじゃないかって、私に迷惑をかけてるからって」
「そうかも…」
「そんな風に考えて出て行くばあさんを、私は無視してたんだよ、これって殺したのと同じじゃん!」
「ちょっと待って、それはまだ違うから。絶対大丈夫だから、ね!話はわかったから、とにかく警察に行って探してもらおうよ、ね!」
ぷるるるるるるる🎶
ぷるるるるるるる🎶
礼子の腕を取って立ち上がろうとした時、私のスマホが鳴った。
_____パパ!
「はい、もしもし!」
『見つけた!見つけた!でも、怪我してるから救急車呼んだよ、これから付き添って病院行くから。病院が決まったら連絡するよ』
「ありがとう!」
「礼子、聞こえた?ばあさんいたって。怪我してるらしいけど、パパのあの様子ならそんなにひどくないと思うから。救急車が行く病院が決まったら連絡くると思うから、準備しとこ、ね!」
へたへたと座りこむ礼子。
「よかった…」
心からの安堵の声だった。
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