体調不良?

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体調不良?

____ダメだ、なんで?暑い、暑すぎる! 周りの誰もそんなに暑がっていないのに、私だけ汗が吹き出してくる。 もともとそんなに汗かきじゃないはずなのに。 「晶馬(しょうま)さんは、市役所勤めなんですよね?なかなか大変じゃないですか?」 「えぇ、まぁ。特にまだ若いので苦情処理が主な仕事になってます」 会話をしながらでも、流れる汗は容赦ない。 持っていたハンカチでは足りなくて、おしぼりも使う。 「ちょっと!お母さん、どうしたの?大丈夫?」 やっぱり、婚約者の前ではママじゃなくて、お母さんなんだね、とか思いながらも汗が止まらない。 「あ、もしかして…すいません、ちょっと!」 店員さんを呼んで何かをお願いする紗英(さえ)さん。 店員さんはすぐに、ふかふかのタオルを持って来てくれた。 「お客様、これをどうぞ」 「あ、ありがとうございます」 清潔なタオルは、流れる汗を吸い取ってくれて顔まわりがさっぱりした。 「すみません、なんか急に…」 「いえいえ、私も奥様くらいの時に経験がありますから。イヤですよね?女って」 _____あ、これ、ホットフラッシュってやつ? そうか、更年期だ。 そういえばもう生理もなくなってた、と今頃思い出した。 「おいおい、食事中になんだよ、失礼じゃないか」 夫が偉そうに言ってくる、それはわかってるけど。 「そんなこと言われても…」 「田中さん、それは無理な話ですよ、本人にもどうにもできないことなんですから。それより奥様、他に気分が悪いとかないですか?」 _____紗英(さえ)さん、優しい! 「もう大丈夫です、落ち着きました」 「この後はグッと体が冷えて来ますから、風邪をひかないようにしてくださいね」 「ありがとうございます」 遠野家の人たちは、何もなかったようにスマートに食事を続けていた。 「すみません、ほんと」 「いえ、お気になさらず。女性は色々と大変だと妻に何度も言われましたので」 穏やかに笑う遠野(とおの)さんのご主人。 それに引き換え… よほどお腹が空いていたのか、ガツガツと食べ進める夫。 私の心配もしてくれてない。 _____もうっ!おぼえてろっ! 「お母さん、これ…」 遥那(はるな)がテーブルの下から小さな鏡を渡して来た。 _____おわっ!ひどい顔!! 「すみません、ちょっと失礼します」 お手洗いに立ち上がり、通り過ぎざま夫の椅子を蹴飛ばした。 「あつっ!」 手に持っていたおすましのお椀を揺らしてしまったようだ。 「あら、ごめんね、慌てちゃって」 素知らぬ顔で手洗いへ向かった。
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