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「どんなものにも…なれるのか?いまさら…」
『いまさらじゃくて、今からだよ、きっとさ』
「そういう礼子は更年期は大丈夫なの?」
『ん?ん、まぁね、そっちは大丈夫』
「そっちは?」
『いや、そんな深い意味はないよ、私はそんなに大した症状はないってこと』
「いいなぁ。でも、更年期になるってことは女としては終わりってことなのかな?」
『それは違うんじゃないの?体の仕組みが変わるだけでさ、自分自身が変わるわけじゃないんだから』
「そうだね。ま、いまさら女としてどうとかよりも、どうやって楽しく暮らしていくかだね」
そのうち、ランチでもしようよと約束して電話を切った。
脱皮かぁ…。
柵から解放されるって?
そういえばもう子どもも大きいから、保護者同士の柵はない。
私の両親は早くに亡くなったから介護の心配もない。
夫の両親は今のところ特に問題はない。
経済的なことは…。
家のローンが来年には終わる。
贅沢しなければ、老後の資金も大丈夫。
家族も今は問題ないし。
_____お?そう言われてみれば、私はそこそこ恵まれているじゃん!
これといった不安材料や悩み事は見当たらない。
意外に身軽に動けそうな状況だ。
さっきまでの鬱々とした気分が、急に明るくひらけてきた感じがする。
ピーッピーッピーッと2回めの洗濯が終わったと知らせるアラームが聞こえた。
外は今日も晴れ渡っている。
これならシーツもすぐ乾きそうだから、もう一回、洗濯しよう。
ふんふんふん🎶
鼻歌が出てしまう。
_____物事は見方を変えれば、感じ方も変わる、きっとそう!
夫とは寝室が別にしてある。
不規則な夫の就寝時間に合わせられないから、ずっと別。
本当の理由は、新婚当初、一緒の布団で寝ていた時に寝相の悪い旦那から熟睡中に、顔に肘鉄をくらったからだけど。
息が止まるほどびっくりしたのと、あまりの痛さに悲鳴をあげることもできなかった。
それにも気づかず少しも起きようとしない旦那を、思いきり蹴飛ばして頬を冷やしながらソファで寝た。
今じゃ笑い話だけど、当時の私は瞬時に離婚まで考えた…それだけ若かった。
いまはそれぞれに寝室があることで、ゆっくり眠れるようになったし好きな時間にスマホをいじっていても、嫌な顔をされることもない。
これは、ぜひ世の奥様方に勧めたい、特に熟年夫婦になったなら。
ふんふんふん🎶ふふんふん🎶
ん?
ベッドの下に何かある…は?え?
ちょっとしたエッチな雑誌。
今時、高校生でもこんなの見ないと思うんだけどな。
_____そうだ、こうしといてやれ!
雑に押し込められて、クシャクシャになった雑誌を綺麗に直して、ベッドの真ん中に置いておいた。
見つかってしまった、と慌てるだろう夫の反応が楽しみだ。
次の日。
夫の寝室の本棚に、綺麗に並べて入れてあった。
_____なんか、ちょっと負けた感…
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