105人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
こんなこと、本当にしていいのか。
さっきから背徳感が拭えない。俺の中に植え付けられてきた一般的価値観がずっと叫んでる。
恋愛は男女でするものなんだ、と。
そんなの当然知ってる。みんなそれが普通だと思ってるのは嫌というほど分かってる。
でも、今俺の目の前にいるのは男。
クラスメイトの男。
どうしようもなかった。
だって、そんなの自分でどうにもできない。
俺が好きなのは、目の前にいる男。
この男にキスされたい、触られたい、求められたい、支配されたい。
だって、好きだから。
たまらないほど、好きだから。
そうだよ、好きなんだ。
何が悪いんだよ、男が男を好きになって。女を好きになるのと何が違うんだ。
“人”を好きになった、それだけのこと。
そう思っても、チロチロと舐めるように『恐怖』という炎が心を炙る。
もし、バレたら。
俺の恋愛対象が男だってバレたら。
クラスの中での俺のイメージが。ポジションが。
全部ぶっ壊れていくんじゃねーのか。
女子にあれこれ噂されて、今まで普通に友達だったやつに警戒されて、全部壊れていったら。
みんなが、俺から離れていったら。
ーーーそんなの、怖いに決まってる。
怖いくせに、覚悟なんてないくせに、“好き”って気持ちがそんな感情丸ごと燃やし尽くそうとする。心の色んな所に延焼して、心全てを支配しようとする。
「嫌なら嫌って言えよ。…莉玖。」
優真が俺の頬に触れながら小声で囁いた。その声が少し震えている。
付き合ったのは、先週。
お互い初めてだった。
誰かと“付き合う”という行為が。
恋人らしい行為って、何をすること?
…ああ、背徳感が消えない。
でも、シてみたい。
最初のコメントを投稿しよう!