情炎

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こんなこと、本当にしていいのか。 さっきから背徳感が拭えない。俺の中に植え付けられてきた一般的価値観がずっと叫んでる。 恋愛は男女でするものなんだ、と。 そんなの当然知ってる。みんなそれが普通だと思ってるのは嫌というほど分かってる。 でも、今俺の目の前にいるのは男。 クラスメイトの男。 どうしようもなかった。 だって、そんなの自分でどうにもできない。 俺が好きなのは、目の前にいる男。 この男にキスされたい、触られたい、求められたい、支配されたい。 だって、好きだから。 たまらないほど、好きだから。 そうだよ、好きなんだ。 何が悪いんだよ、男が男を好きになって。女を好きになるのと何が違うんだ。 “人”を好きになった、それだけのこと。 そう思っても、チロチロと舐めるように『恐怖』という炎が心を炙る。 もし、バレたら。 俺の恋愛対象が男だってバレたら。 クラスの中での俺のイメージが。ポジションが。 全部ぶっ壊れていくんじゃねーのか。 女子にあれこれ噂されて、今まで普通に友達だったやつに警戒されて、全部壊れていったら。 みんなが、俺から離れていったら。 ーーーそんなの、怖いに決まってる。 怖いくせに、覚悟なんてないくせに、“好き”って気持ちがそんな感情丸ごと燃やし尽くそうとする。心の色んな所に延焼して、心全てを支配しようとする。 「嫌なら嫌って言えよ。…莉玖(りく)。」 優真(ゆうま)が俺の頬に触れながら小声で囁いた。その声が少し震えている。 付き合ったのは、先週。 お互い初めてだった。 誰かと“付き合う”という行為が。 恋人らしい行為って、何をすること? …ああ、背徳感が消えない。 でも、シてみたい。
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