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「あの、すみません……」
振り向くと笑顔の若い男が市役所の入り口付近に立っていた。
こういうことはよくある。
「どうかしましたか?」
スズキヒロシは声を掛けられるのに慣れていた。
観光地に行くと、必ずと言っていいほど「写真撮ってもらえませんか?」とカメラを渡される。
道を聞かれるのなんて日常茶飯事だ。
声を掛けられやすい体質だということは自覚している。
「駅に行きたいのですが、道が分からなくて……」
白いTシャツにジーパン、短めの黒髪。丁寧な言葉遣いで、爽やかな印象のある青年は笑顔のまま言う。
「あ、それだったら、車で送りましょうか?」
駅への道順を教えるより早いと思い、営業車を指さしたところで背後から呼びかけられた。
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