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職員室に入ると授業中ということもあり、年増の養護の先生と若くて綺麗な音楽の先生だけがいた。
スズキヒロシに気付いた養護の先生が椅子ごとクルリとこちらを振り向き、驚いたような顔で、
「あー、良かった。スズキ君無事だったのね。電話が繋がったから大丈夫とは思ってたけど……」
「え、なにかありました?」
スズキヒロシが聞くと、養護の先生は事情を説明してくれる。
「知らないの?近所の殺人事件、スズキヒロシっていう名前の人が狙われていたみたいよ」
「まじっすか?サトウヒロシってよくある名前だけど、俺、殺されてたかもしれないってことっすか?」
「そうですよ!殺された3人って、みんなスズキヒロシって名前みたいですし。殺されたのスズキさんかと思って心配してたんですよー」
綺麗な音楽の先生に心配されるのは、ちょっと嬉しい。
「あ、犯人が捕まった時のニュースやってますよー」
音楽の先生が手招きをする。
犯人の顔が画面いっぱいに映し出されているテレビ画面には、
『サトウタカシ容疑者、25歳』という字幕とともに、市役所で駅への道を尋ねてきた、爽やかな男の笑顔があった。
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