「眼覧樹」

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「眼覧樹」

私の根付いている森は…色々と噂が歩いており… 「夜になると、白衣の女が徘徊する」 「どこかに館があって、そこから出たものはいない」 …なんと陳腐な噂でしょうか。 わたくし、ありきたりの噂は嫌いでして… 遠く離れた仲間が一部の種子で、このやふな 噂を伝えて生まれ変わるたびに… 人間を何となく嫌悪し…また自分も嫌悪し… ただ、ただ一つだけ、寒気を催す噂を知りました。 それは…「この森のどこかに目が吊られている」 そんな内容でした。聞いた当時は、 また在り来りだなと感じましたが… のちに熱がこもってきた物で、こんなしか 覚えていませんでした… しかし、在り来りという以外の噂は、 震えて怖がる気性なので…真相をなかなか 確かめられずに過ごしていました…が、 今日、隣の小さな(シキミ)君に 勇気を出して場所を聞きました… この森の平和を荒らすやつだったら、 放って置けない二番目の気性により… ですが、聞いたことはあるが、 場所は知らないという返答…がっ栗。 そこに、それを聞いていた他の樒さんが 場所を詳しく教えてくれました。 その方は、人間で言う、「噂好き」… さぁ、今夜は寒くもないのに 震えながら過ごすのでしょうね…私…
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