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「ヒロ」
たった一言。
名前を呼ばれただけなのに全身に電流が走る。
「ゴメ……――」
「言わないで! 私が言うの‼」
彼の言葉を遮り叫んだ。決意も、何も関係ない。ただただ、勢いだけで頭を下げた。
「ごめんなさい! ありがとう! 助けてもらえて嬉しかったっ!」
顔なんて見られない。
それでも。
――大切なことは教えてもらったから――。
「好き、……」
乱れた呼吸は整わないけれど。
「だから、傍に、居たい……」
ひゅんっ
聞こえた胸の音は、私と彼。どちらの音か。
「オレは、ヒロを守れる大人になるから……ずっと、傍に居るから……」
「……ん……――」
いつかの幼い約束。
小さな約束は、時にケンカをしたり、少し自信を無くしてみたり。揺らぎながらも紡がれて。
そうして、目の前に存在する。
愛しい人たち。
「私、ケンの傍に居るの」
「……ヒロ?」
「ずっと、〝好きな人の傍に居るの〟」
「きゃぁうっっ!」
そう言って彼を抱き締めた途端、腕の中で息子の嬉しそうな声が上がる。
「ケンも、ヨウも」
そして名も付けてあげなかった息子の小さな腕に抱かれた〝見えない友達〟も。
「大好きよ……――愛してる……」
全てを抱き締めて。
全てを温もりで満たして。
「ヒロちゃん、幸せね」
声に誘われて振り向けばシワシワの笑顔。
「皆ね」
「そうね」
いつかの私も同じ笑顔でいたい。
愛してる人の傍で。
ただ。ただ。
――好きな人の傍に居るの――
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