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いつもより口数少なく食事を終え、空いた食器を台所に下げて、水を入れたやかんを火にかけると、安藤部長はゆっくりと近付いて来て私の背後に立った。
「真央……やっぱり具合でも悪い?」
「いえ、どこも悪くありませんが」
「じゃあなんか怒ってる?」
私を怒らせるようなことをした心当たりでもあるのか、後ろから私の肩越しに顔を覗き込んで機嫌を窺う安藤部長にイライラする。
今まで私が何を考えていようが無関心だったのに、なぜ今日はそんなに下手に出てくるのかがわからない。
「別に怒ってません」
急須に茶葉を入れて、水切りかごの上に伏せてある湯飲みを取ろうとすると、安藤部長が背後から手を伸ばし、手に取った湯飲みを私に差し出した。
「それにしては険しい顔してるけど」
誰のせいだと思ってるんだ!
猛烈に腹が立ち、受け取った湯飲みを音をたてて調理台の上に置くと、安藤部長は目を丸くして私の顔を見る。
「さっきからなんですか?私は顔が地味な分、常にヘラヘラ笑ってなきゃいけないんですか?この顔がご不満でしたら、もっと綺麗な方のところに行かれたらどうです?」
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