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「だったらお言葉に甘えて……」
「よし、行こう!」
「飲むならわざわざ場所変えなくたって、ここでも良くない?」
「近くに俺の行き付けの店があんの。そこ行こう」
彼は行き付けのその店に美味しいウイスキーをボトルキープしているから、私にも飲ませたいらしい。
さっきまでの飲み代を彼にご馳走になって、促されるまま店を出た。
私も彼もすでにかなり飲んでいるから、少しばかりテンションが高い。
二人とも何がそんなにおかしいのか、さっきからくだらないことで大笑いしている。
初めて会った人とこんなに意気投合することなんて滅多にないし、今だけはイヤなことも代わり映えのない日常も何もかも忘れて、目一杯楽しんでおこう。
いつの間にか眠っていたらしい。
気が付くと私はベッドの上に体を横たえていた。
カーテン越しに漏れてくる日射しが部屋をうっすらと明るくしていることで、朝が来たのだとわかる。
重いまぶたを必死で開き、今何時なんだろうと壁を見上げたけれど、そこにあるはずの時計はなく、見覚えのない洒落たデザインの壁紙が視界に飛び込んできた。
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