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恐る恐る近づいてみるが、女性はまったく動かなかった。
誰がどう見ても、拷問を受けた結果であることは明らかだ。
何の罪でこんなことになったのだろうか。自分もこうなる運命なのかと思うと、ぞっとしない。
呼吸しているのか確認しようと顔を近づけたところ、突然、女性がぱっと顔を上げた。
「ひいいいっ!?」
「ン……。新入りさん?」
少年のようなハスキーボイスだった。
「そ、そうだけど……」
「あたしのこと、怖い?」
「怖くは……」
「いいよ。怖いよ、こんな格好。自分でも怖いと思うから」
女性は「てひひひ」と変わった笑い方をする。痛ましい姿だが案外けろっとしているのが逆に恐ろしい。
顔が汚れていてはっきりしないが、20歳前後のようだった。体が華奢なため、10代の少年のようにも見える。
手には手錠がかけられ、ボロボロになっている見た目から怖くなっているが、危害を加えてくるような人ではなさそうだ。
「ケガ、大丈夫なの……?」
「大丈夫、なんとか生きてるよ。全身痛くて眠れないけど、よく気を失ってるから平気」
ひどい拷問を受けているようだが、彼女はそれでも前向きで明るかった。
彼女にとってはジョークのつもりなのだろうが、モニクは「あはは」と愛想笑いすることしかできない。
「何をして捕まったの?」
モニクがどう距離を取っていいのか考えていると、女性のほうから質問してきた。
「殺人罪……」
「こわっ! 人は見かけによらないと言うけど、こんな可愛い顔して人殺しなんて!」
「殺してない殺してない! 私は殺してないの、無実なのよ!」
モニクは慌てて否定する。
「路上に人が倒れてたのが発見されて、私が石で頭を叩いて殺したって言うんだけど、私はその人を知らないし、会ったこともないの。それなのに、いきなり逮捕されて……」
「それは災難だったね」
実際、モニクは何もしていない。昨日は一日中、家で家事をしていたので、外に出ていないのだ。完全に言いがかりで、警官はモニクを逮捕していた。
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