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「私どうなっちゃうんだろ……」
「あたしみたいに拷問されるかって?」
モニクは頷く。
「反抗しなければ、暴力を振るわれないと思う。たぶん無期懲役だね」
「無期!? 何もしてないのに一生出られないの? 他に犯人はいるはずなのよ。無実なのを証明できればいいんだけど……」
「誰かが保釈金を払ってくれれば、出られるかもね」
「保釈金……。払ってくれるかな……」
「それはないんじゃないかな」
「高いから?」
「君のご両親はきっとたくさんお金は持ってると思う。でも、それは売って得たお金だから、絶対に使わない」
「売るって何を?」
「君をだよ」
「私……?」
女性が何を言っているのかまったく分からず、ぽかんとしてしまう。
「ふーん、知らないんだ。奴隷禁止法が数年前に施行されたのは知ってるでしょ? ちょっと前まで普通に人身売買が行われてて、奴隷は労働力を提供してたんだけど、それがいきなりなくなると世が回らなくなっちゃう。なので、新たな方法で労働力を得ようとしたんだよね」
「え……。何の話……?」
「君の話」
相変わらず彼女の言わんとするところが分からない。
「国家ぐるみで、犯罪者を無償労働させようとしてるんだよ。これまで懲役刑の受刑者は、国の施設内でしか働けなかったんだけど、法律を変えて民間の施設でも働けるようになったんだ。国は民間企業の要望に応じて、受刑者を積極的に派遣してるわけ」
「ちょっと待って! ええっと、ようするに……奴隷がいなくなったから、犯罪者を奴隷にしてしまおうってこと?」
「そう、国家所有の奴隷だね。でも、永久に強制労働させられるほど犯罪者は多くない。そこで、無実の人を犯罪者に仕立てて労働力を補おうとしているんだ」
「違法じゃないの……?」
「違法というより脱法? 奴隷は倫理的によくないという世論に従って禁止したけど、働いてくれる人は欲しいから、別の方法で調達しようとしてるんだ。国が必要悪を演じてるみたいな?」
「…………」
それは理屈なのかもしれないが、奴隷に近い身分になってしまう身としては納得できるはずがない。
「それでも一応、国家は悪いことはできないことになってるから、露骨な人さらいはせず、基本的にいなくなってもいい人を選んでるはず。心当たりない?」
「心当たり……」
モニクは黙り込んでしまう。
「ない」ならば即答できるはずだから、それは「ある」という意味だった。
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