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「あなたはどうして捕まったの?」
今度はモニクが女性に問う。
「あたしは魔法使いだから」
「魔法使い? ……おとぎ話の?」
「そう、それ」
「へ、へえ……。魔法が使えるの?」
ふざけているのか、真面目なのか判断がつかず、モニクは困惑する。
「うん、たいていのことはできるよ。でも、人前では使っちゃいけないことになってるし、今はボロボロだから使えないけど」
そういって彼女は、手錠でつながった手を上げて見せる。
彼女がとぼけているようには見えなかった。
モニクは牢に入れられる前に手錠を外されているが、彼女はつけたまま。それだけ危険人物ということなのだろうか。そして、ここまで拷問を受けるには特別な事情があるはずだ。
「どうして、魔法使いだと拷問されるの?」
「魔法が便利すぎるからだね。うらやましい、許せーんって」
「え? そんな理由で……?」
「触らず物を動かしたり、空を飛べたり、動物を話せたりできる人がしたら、うらやましいと思わない?」
「思うけれど……」
「それがズルいんだって。特別なことをできる人が存在するのは、社会の秩序が乱れるから、許したくないんだと」
「なにそれ……」
「魔法使いは、一族の子孫が厳しい修行を得て魔法使いになるんだ。でも増やしたくないから、魔法使いになるとこんなひどいことが待っているぞって、見せしめに拷問されるのよ」
「ひどい……」
「でも魔法使いになるのは、一族の掟だから拒否できない。なったらなったで捕まるから普段は町に出ないんだけど、うっかり出てきちゃったんだよね。実はこの町に古い知り合いがいて、その人に会えないかなって、久しぶりに訪ねてきたんだ。これは危険を分かってて、ノスタルジーに浸ったあたしが悪いね」
モニクはこの世に魔法使いが存在することを知らなかった。
しかし実在はするが、社会として滅ぼそうとしているから、世間には知られていないようだった。
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