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「魔法でここから出られないの?」
「出られるよ。体力が戻れば、こんな牢屋ぐらい楽勝。……でも、なかなかその機会がなくてね」
女性は服も体もボロボロだ。長い期間、拷問を受けて魔法を使う力が残っていないのだろう。
「どうすれば体力が戻る? 魔法が使えれば、私も助かる?」
「あはは、ストレートな質問だね。そりゃ助かりたいよね」
奴隷になる運命が決まっているモニクにとって、今頼れるのは、このボロボロな自称魔法使いしかいなかった。
少しでも助かる可能性があれば聞かずにはいられないのは、彼女の性格だ。それでずうずうしいとか、おこがましいとは思ったりしない。
「もちろん助かるよ」
「ほんと!?」
モニクは目を輝かせる。
「でも、君を助けてあたしにメリットある?」
女性の言い方は相変わらずシニカルだ。非難しているわけではなくて、からかっているような意図を感じる。
「ない……けど、何でもするから、私を助けて」
「何でもって……奴隷になるってこと?」
奴隷になりたくないから頼んでいるのに、彼女はそこであえて奴隷という言葉をチョイスする。
「……うん。ここから出られるなら……」
モニクは両親に捨てられているので、牢屋から出られたとしても行く場所がない。それなら、この体をまるごと彼女に預けたほうがマシなのではないか、そう考えたのだ。
「ふーん。そういうことならオッケー。手を出して」
「手を?」
「見て分かるように今のあたしに、魔法を使う体力はない。だから、君に分けてもらう。魔力っていうのか、生命エネルギーだね」
「分けられるものなの?」
「嫌?」
「……ううん、大丈夫」
生命を分けると言われると戸惑ってしまう。しかし、彼女の奴隷になると言った以上、下がないといけない。それがモニクの自身に課すルールだった。
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