牢と魔法使い

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 モニクは彼女に手を差し出した。 「私はモニク。あなたは?」 「ティナ。今はそう名乗ってる」  ティナは手錠のついた両手でモニクの手を取る。  その手は氷のように冷たく、折れそうなほどに細かった。 「痛くはないから安心して。ちょっと元気をもらうだけ」  そう言うとティナは、目を閉じて精神統一する。  モニクは体にぞくぞくするような感じがあった。何かが動いて移動しているよう感覚。でも、不思議と嫌な感じはしなかった。  ティナの体に赤みが差していくのが分かった。手から感じる体温も上がってきている。  そして、赤黒くなっていたアザも消え、ティナの肌は陶器のように白く、なめらかになっていく。 「これが魔法……」  目の前でケガを治してみせた。彼女が魔法使いというのは本当だった。  ボサボサで血と汗で固まっていた黒髪もさらさらになっていく。汚れた顔も綺麗になり、ようやく元の顔を見ることができた。 (私、ティナを知ってる……?)  これまでの人生で魔法使いに出会ったことはなかったが、モニクはティナの顔に親近感を覚えていた。 「ンっ……!?」  モニクは思わず声を上げてしまった。  それはティナがモニクの口に唇を重ねてきたからだ。  元気の受け渡しに必要な行為なのか。モニクが戸惑って何もできないでいると、ティナがゆっくり口を離した。  モニクは急に恥ずかしくなって後ずさりしてしまう。 「別に初めてじゃないでしょ?」  ティナはけろっとした感じで言う。 「そ、そうだけどさ……!」 「じゃあ、気にすることないじゃない」  体力を渡すのに必要だと言ってくれればいいのに、そんな対応をされるともやもやしてしまう。 「よし、元気も戻ったし、脱獄といこうか」  ティナはアザがなくなり綺麗になった両腕を、モニクに見せる。  次の瞬間、鉄製の手錠が液体のように溶けて、地面に流れ落ちた。 「肩車して」 「え?」 「壁を壊せればいいんだけど、さすがに今は無理。あの窓から出よう」  ティナは2メートルの高さにある小さい窓を指さす。  窓はぎりぎり人一人が通れるほどの大きさしかなく、鉄格子がはめられている。
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