牢と魔法使い

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 モニクはしぶしぶ身を低くして、肩にティナを乗せてゆっくり立ち上がった。  持ち上がるのか不安だったが、ティナは驚くほど軽かった。  ティナが鉄格子に手を当てると、鉄格子は手錠と同様、液体のように溶けて流れていく。  モニクはティナの足を押してやる。ティナはもがくように窓をはいでて、外側に出て行く。脱獄成功だ。 「今度はモニクの番だよ」  外からティナが呼ぶ。  モニクは飛び上がって窓枠に手をかける。そして、腕の力を使って体を持ち上げる。 「ぐぐぐ……! このぐらいなんだっての……!」  助かるためならば何でもやってみせる。持ちうるすべての力を動員し、窓枠に頭を突っ込む。 「入った!」  ようやく外の景色を見ることができた。夜空は綺麗に晴れていて、たくさんの星が瞬いているのが見える。  そのまま体を出そうとするが、出なかった。窓枠が狭すぎて、肩がつっかかってしまうのだ。 「出ないの?」 「出ないんじゃなくて出られないの……。手を貸して」  だが背の低いティナの手は届かなかった。 「お願い助けて。魔法でなんとかならない?」  しかし、ティナはぼうっと見ているだけで何もしてくれなかった。 「なんかかっこ悪くない?」 「そりゃかっこ悪いけど……」  窓から頭だけ出して抜けなくなっている状態だ。誰かに見せたい姿ではない。 「そうじゃなくて、らしくないでしょ」 「え?」 「そんな人じゃなかったはず。誰よりも早く先に行って、あとから来る人を待ってるのがモニクでしょ。どうしてそんなところで止まってるの?」 「何を言ってるの……?」 「それはこっちのセリフ。何に縛られているの? 親のために結婚? バカみたい。親に見捨てられてるなんて、ざまあないよ。それで、あたしの奴隷になる? そんなのあたしの知ってるモニクじゃない!」  ようやくモニクは気づいた。  ティナとは会ったことがあるのだ。子供のころ、よく一緒に遊んでいた。だがいつの間にかティナは引っ越して連絡が取れなくなり、やがて忘れてしまっていた。 「さよなら」  そう言ってティナはモニクを置いて行ってしまう。 「待って! 行かないで!」  何度も叫んだが、ティナは振り返らなかった。  そして姿が見えなくなってしまう。
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