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『こんばんは』
『沙絵子様、いらっしゃいませ』
その日は冬の訪れを感じさせる
少し尖った風が吹いていた
『今日は話があるのだけれど、いいかしら?』
『はい』
俺は少しだけ微笑んだ表情で、そう応えた
沙絵子さんは、その後もよく来店されていたが
これまで、改まった形で話しかけられた事は一度も無かった
『いつも素敵な時間をありがとう。本当にこのお店は私のお気に入りなの』
『こちらこそ、ありがとうございます。沙絵子様に来て頂けて、いつも空間が喜んでるのがわかります。』
『空間が?』
『はい。沙絵子様は本当にいつもステキな空気と思考を纏っておられます。物事に意味を持たせることは至極真っ当なことでは無く、尊いものだと私は考えます』
『まぁ。あなたは本当に、孤高な思考をお持ちだわ』
沙絵子さんがスッと名刺を出した
俺はハッとした
そこには誰もが知っている
インテリアメーカーの名前が書いてあった
沙絵子さんは
某有名インテリアメーカーの役職員であった
『あなたの力を、貸して欲しいの』
『私の?』
『きっと素敵な未来が見られるわ』
『、、はい』
俺の人生は
うまくいっている
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