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「私を当てられたら、今夜はうちに泊まっていいよ」
謎めいた微笑みを浮かべながら、麻衣は小学校の卒業アルバムを僕の前に開いた。
6年1組の集合写真の生徒の中、10年前の麻衣の姿をさがした。
「ヒントはこの中で一番暗い顔の子。あの頃はいじめられっ子でさ」
僕は麻衣のことより、写真の上の方に並ぶ、小さな顔写真に目が行った。
アルバム撮影時に欠席していた生徒の写真だろう。
でも4人とは。インフルエンザでも流行っていたのか?
麻衣に尋ねたら、
「この4人ね、その頃の私の友達なんだけど――」
「けど?」
「いじめていたの、私を」
麻衣がニヤッとした。
一瞬、4人の写真の周囲が黒枠に変わった気がした。
ドキッとして、僕は麻衣とは違う子を指した。本当はどの子が麻衣か分かっていたけど。
そして午後8時台の電車でそそくさと帰った……。
(了)
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