月華 -Angel of Death-

15/19
前へ
/19ページ
次へ
 罪により、死亡___  ラインの文字が、幾度も目に浮かぶ。  男は薄ら笑いを浮かべ、近付いて来る。玄関は男の背の向こう。  リビングの窓を開けた。ベランダは無い。此処は二階、だけど迷っている場合じゃない。    男は刃物を振り上げる。殺される。私はその窓から飛び出した。宙を感じる暇も無く、裸足のまま、次の瞬間には地面に転がっていた。   鋭い痛み。上を見上げると見知らぬ男はこちらを覗き込んでいる。窓から男の顔が消えた。追いかけて来るかもしれない。  生きたい。律にまた逢いたい――!  痛む足を引きずって、目の前の家の入口に逃げ込む。門の影に身を潜めてしばらく様子を伺う。男は追っては来ない。    どうするか迷っていた時、青木先輩が向こうから歩いて来た。 「先輩!」  潜んでいた入口から、先輩を呼び止める。 「びっくりした、どうしたの、裸足で」 私はさっき起きたばかりのことを話す。先輩はアパートの周りを確認し、私を手招きした。 男は消え去り、特別部屋の中は荒らされた様子も無い。       
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加