月華 -Angel of Death-

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 車が背後で急停止をかけていたブレーキ音を思い出す。まさか、あの時に事故があったなんて。  「月華(つきは)のせいよ。彼は巻き込まれただけ。身体に不自由をおって、彼はいなくなったのよ」 悲痛な声。泣いている。震えた心の叫び。 「答えて! 何故、彼を奪ったの!」 以前に聞いた事がある。青木先輩の婚約者が行方不明になったと。  青木先輩の行き場の無い哀しみ、悔しさが痛いほどにぶつかってくる。 「貴方も、いなくなればいい」 全てが解ける。繋がる記憶。目を真っ赤に泣き腫らした青木先輩の姿に、私もいつの間にか泣いていた。  青木先輩が私の首に両手を伸ばした。死ぬんだ__ そう思った。 「月華(つきは)!」 薄らいでいく意識の中で、ブラックローブを見た。  The Grim Reaper  これは贖罪――  死神が迎えに来た 「月華(つきは)から離れろ!」  不思議ね、まるで天使が現れたみたい。優しい瞳の美少年。  伸ばした指先が繋がれた――  ざわめきの中、私は完全に意識を失い、気が付いた時には病院のベッドの上だった。  「律くん……?」 「月華(つきは)、よかった、目が覚めた?」 窓からは眩しいほどの陽射しが入り込む。
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