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どこかで逢った事がある。大きな瞳と栗色の髪。愛らしく微笑むその愛嬌の良さ。
「月華?」
「ポメラニアン!」
そうだ、幼かった頃に飼ってた犬にそっくり。
「なんだよ、いきなり笑いだして」
「だって。思い出したらおかしくて」
すっかり追われていた事を忘れて笑いだした私に、『死神くん』は嬉しそうに目を輝かせた。
「思い出したの? よかった、本気で忘れられたんだと思った」
ん……? 話が妙にずれてる気がする。
「貴方、誰なの……?」
真っ直ぐに見つめた先、『死神くん』はおっきな溜め息をついて、その場にしゃがみ込む。
「やっぱり覚えてないんだ」
柔らかそうな前髪をかき上げて、まいったなぁ、なんてぶつぶつ言ってる。
黒ずくめで追いかけられて怖かったけれど、どうやら悪い人ではなさそう。
「ね、私、貴方とどこかで逢ってるの?」
だって本当に記憶にないんだもの。素直に尋ねたら、『死神くん』はさらにがっかりと肩を落とした。
「俺は律。名前くらい覚えてない?」
「まったく覚えてないわ」
こんな美少年、記憶に残らないわけがない。
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