24人が本棚に入れています
本棚に追加
上目遣いで私を見上げる律。
「俺はすぐにわかったんだけどな」
律という名前にも聞き覚えがない。でも、律くんの方は私を知っているみたい。
「とりあえず、帰ろっか」
「帰る? 帰るって?」
私の住むマンションはすぐ目の前。でも初対面同様の律の前で帰るわけにはいかないかな。
なのに、何故。
「俺んち、ここだから」
律が指さしたのは私と同じマンション。
「え? なんで!?」
「なんでって、今日越してきたばかりだけど」
律は立ち上がり戸惑った私の肩を軽く押す。
「月華もここでしょ、朝、見かけたんだ」
さらりと言い、すたすたと歩いて行く。
こんな偶然をどう理解しろと。もしかしてストーカーとか。ん〜、そんな奇妙な出来事には見舞われてないし。
あれこれ思いを巡らせてる間に、マンションに辿り着き、律はエスカレーターに向かう。私は慌ててその後を追った。
そして、二度目の何故。
「なんでお隣さんなのよぉ」
私の雄叫びは狭い通路に響き渡った。
最初のコメントを投稿しよう!