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花那にとって颯真のとった行動は謎だらけだった。別れを告げたはずなのに二人の距離は縮まり、まるで本当の夫婦のようだった。なにが颯真を変えたのか、それとも記憶の無かった時期の自分に問題があったのか……分からない。
傷の手当てを済ませると、花那は自室のデスクやチェストの棚を一つずつ丁寧に調べていく。彼女が持っていたはずのものがいくつも無くなっている、あの時の離婚届も含めて。
「やっぱり無いわよね、じゃあ颯真さんが……?」
もしかしたら颯真が先に離婚届を出してしまったのだろうか? そうも考えたが花那はすぐにそんなはずはないと気付く、入院していた病院でも彼は夫だと説明していたしその後も何の変化も無かった。
役所に出すつもりもないのなら、なぜ颯真が花那の荷物や離婚届を隠しているのか? どうしても花那には彼の考えていることが理解出来ないまま。
ずっと疑問だった結婚指輪が無いのは当然だった、あの出ていく前の日の花那が颯真に突き返してしまったのだから。きっと颯真も一度返されたものをわざわざ付けてやる気にはならなかったのだろう。
「颯真さんは何かを隠しているとも言ってたわ……」
あの時、何かを伝えてくれようとした颯真。そんな彼を止めたのは花那の方だったが、今はその続きを聞けなかったことを悔やんでいた。
――もし、颯真さんが私に言いたかったことが今の自分と同じだったら?
事故の前の自分なら今頃は迷わずこの家を出て行ったはず、それなのに今の花那にはどうしてもそうすることが出来なかった。
颯真と過ごした短い時間が、花那の心を変えてしまった。いつの間にか夫である彼に愛されたいと望むようになってしまっていたのだから。
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