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「大人二名で、二時間」
二人がやってきたのは近くにあるカラオケルーム、平日の午前中ということもあって割と空いていた。ここなら少しくらい込み合った話をしても気にする人間はいないだろう。
花那はスタッフから部屋番の付いたカードを受け取り颯真と一緒に二階に上がった。そう広くない部屋の中に二つのソファー、きちんと話をするため二人は別々に座る。
「このメッセージの送り主は、やっぱり颯真さんの病院の看護師さんなんですね」
花那もある程度の予想はしていた、一度目のメッセージは颯真の勤務時間内に送られてきたから。もし浮気をしていたとしても、真面目な颯真が仕事をさぼるとは思えなかった。
だがこうして颯真が花那の所に来ても、それが浮気をしていなかった証拠になるわけじゃない。花那はこれから何を話されるのかと、不安で胸が苦しかった。
「ああ、病院の看護師で間違いない。俺が気付かなかった事で花那に辛い思いをさせたと思う、本当にすまなかった」
「いえ、それは良いんです。でもいったいどうしてこんな事に?」
何度も謝ってくる颯真に、花那はやはり彼は何もしてないのではないかと思い始めていた。真っ直ぐな颯真がもし浮気をしていれば、こんな風に花那の目を見て謝れないはず。
彼には後ろめたさなどどこにも感じられなかった。
「俺はその看護師から好意を持たれている事も気付いてなかった。一度……彼女にスマホを預けることがあって、多分その時に君の番号を」
「……そうだったんですね」
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