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――もし自分が花那に特別な想いを抱いていると伝えたら、彼女はどんな反応をするだろうか? 前みたいに俺の前からあっさりと姿を消すのか、それともそんなのは契約違反だと怒るのか。
颯真の頭の中に悲しそうな花那の顔が浮かぶ、きっとこの想いは伝えても彼女は喜ばない。それどころか、花那の今の居場所ですら奪いかねない。
そう考えれば、一方的な颯真の想いなど伝えられるわけがない。自分たちは夫婦なのに、お互いの心は他人よりも遠く感じる。だがそれは颯真が花那に契約結婚を提案した時から決まっていた事だ。
――本当に、後悔先に立たずだな。まさか、俺の方が彼女に夢中になって離れられなくなるなんて。
ただ目の前で死のうとしているように見えたから救っただけ、都合が良かったから契約婚を持ちかけただけ。最初はそれだけだったはずなのに……
「次が最後の患者さんです」
颯真は渡されたカルテを確認して、患者を診察室へと呼ぶ。患者を前にすれば気持ちは切り替えられるものの、本音を言えば少しでも早く家に帰って花那の顔を見たい。
腕時計の針が動くのが遅く感じる。患者が診察室を出ると同時に椅子から立ち上がると残りの仕事を片付け、看護師に指示を出すと彼は自分の鞄を持って裏口から外に出た。
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