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「おかえりなさい」
颯真を迎えたのはいつもと変わらないふわりとはにかんだような笑顔の花那だった。彼女のその様子に颯真はホッと息をつく、まだこの家に花那がいてくれたことに心から安堵した。
持っていた鞄を渡し、花那から部屋着を受け取りバスルームへ。少し熱めのお湯を浴びてスッキリすると颯真は花那の待つリビングへと向かう、キッチンからは良い匂いがしてきて昼も食べれず空腹だったことを思い出した。
「今日はハンバーグとポトフにしてみたの、意外と颯真さんは子供っぽい味覚をしているみたいだから」
なんて意地悪そうな笑みを浮かべる彼女に、颯真はじわじわと胸の奥が暖かくなるのを感じていた。なんて幸せな時間なのだろうかと、噛みしめたいくらいに。
「ハンバーグも好きだよ、だからって子供味覚なんて酷いな。昼も食べそびれて腹ペコなんだ、早速食べてもいいかな?」
「ふふふ、すぐに並べるわ」
颯真の言葉に楽しそうにお皿を用意する花那の後姿、それも可愛らしく颯真は彼女を抱きしめたい気持ちを抑えることで精一杯だった。
――いま、花那との距離を間違えればきっと取り返しがつかなくなる。もっと時間をかけて彼女との距離を縮めなければ。
そう何度も心の中で繰り返し、颯真は花那にいつもと変わらない態度で接することを心掛けた。
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