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「美味い、これは今まで食べた中で一番美味しいハンバーグかもしれない」
少し安心したせいか、空腹を感じた颯真は花那の作ったハンバーグをものすごい勢いで平らげていく。普段の颯真からは考えられないその様子に、花那も最初は唖然としていたがすぐに優しい笑みを浮かべて……
「颯真さんでもそんなお世辞を言うのね、意外だわ」
「お世辞じゃないよ、本心で言ってる。上手く伝わらないかもしれないけれど、花那の料理はいつも温かくて優しい味がする」
五年間、こうして傍で暮らしていてもそんなことも知らなかった。花那が出ていくまで、颯真は彼女が作った料理に手を付けたことは無かったから。
そう思えば颯真は後悔する事ばかりだ、何の文句も言わない花那に甘えて自分は好きなように過ごしてきた。そんな彼女の優しさも性格の良さも、何一つ気付かないままで……
「そう言ってくれると嬉しいわ、誰かのために作るのは嫌いじゃないから」
何度用意しても無駄になっていた颯真の分の食事、彼は長年勤めていた家政婦の作ったものしか口にしなかった。花那の中でその記憶は戻っている、だけど……それを責める気にはなれなかった。
今の颯真は本当に美味しそうに彼女の料理を残さず食べてくれているから。
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