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食事を終えると颯真は花那の横で洗った皿の片づけを手伝う、彼女はそんなことしなくていいというのだが颯真は手伝うと言ってきかなかった。
花那だってそんな颯真の優しさが嫌なわけではない、ただ仕事で疲れている彼に無理をさせたくないだけで。
キッチンの片付けが終わると今度は花那がバスルームへと入っていく、そんな彼女の後姿を颯真は黙って見つめていた。
――花那はまだここに居てくれている、今のうちに彼女がここから出て行かないようにしなくては。そのためには、この家が花那にとって安らぐ場所にしなくてはならない。
今まで家の事は全て花那に任せてきたが、彼女は自室以外を大きく変えたりする事は無かった。なるべく颯真のためにそのままにしていたのだろう。
変わったことと言えば颯真が買ってくる花が、あちこちに飾られるようになったくらいだ。
しかし花那が安らぐ場所にすると言ってもそう簡単ではない、颯真は彼女の好みもよく知らなかった。そんな彼はスマホを操作し、あるページで目を止めた。
「これなら、今度の休日にでも花那と一緒に……」
「私がどうかしたの?」
いつの間にかリビングに戻ってきていた花那が不思議そうに首を傾げる。颯真は慌ててスマホのウエブページを操作し違うものに変えた。
今話してもいいが、せっかくならその日に教えてビックリさせるのもいい。彼にとってはそんな軽い気持ちでも行動にすぎなかった。
そう、運悪くあんな出来事が重なりさえしなければ……
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