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「ただいま。今日は前から気になっていたスイーツの店に寄ってきたんだ、花那は甘い物が好きだっただろ?」
そう言って白い箱を差し出す颯真に、花那は少しぎこちない笑みでお礼を言う。彼の気持ちは嬉しいがそこに何か後ろめたさがあるのかもしれない、と疑ってしまう自分に花那は自己嫌悪しながら。
「ありがとう、このお店とても人気だって聞いたわ。もしかして並んで買ってきたの?」
「あ、いや……それは、その」
照れ臭そうに視線を逸らす颯真の姿が可愛くて、とてもこんな人が他の女性とどうにかなるなんて考えられない。花那はそう思うのに、さっきのメッセージの履歴は消えてなくなる事はなく。
悪意しかない、そんな言葉に心が揺さぶられるのは仕方なかった。
「今日の晩御飯は何を作ってくれたんだ、とても良い匂いがする」
「颯真さんて意外と食いしん坊よね? そんな風には全然見えないのに、ふふふ」
そう言うと颯真は困ったように手を後頭部に添えて「そうかな?」なんて言って花那から視線を逸らしてしまう。そんな彼の言動一つ一つが花那の胸をときめかせるのに……
「花那の所為でもあると思うな、君は俺が美味しいと思うものばかり作るから」
「あら、颯真さんは誰の料理にでも同じことを言ってるのかもね?」
ほんの冗談のつもりだった、だけど花那には自分で言った言葉が胸に刺さる気がした。本当にそうだったら、自分はどうすればいいのか、と。
「言わないよ、そんなこと誰にも言った事はない。花那にだけだ」
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