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信じたい、今の颯真を。そう思うのに、花那の頭の中ではあのメッセージが何度も繰り返される。
自分の記憶の事もまだ何も解決していない、何も颯真に話せないままで隠し続けるのか? それを話し合う前にこんなこと事が起こってしまって、どうすればいいのか分からない。
優しい言葉も本当に自分だけに向けられているのか、疑えばキリが無くなる。彼の仕事に関して花那は何も知らない、分かる事は颯真が勤めている病院の名前くらいなのだから。
そんな場所で誰かと心を通わせているかもしれない、そう思うと花那は気が気ではいられなかった。
「……食べましょう、冷めてしまうわ」
「ああ、そうだな。すぐに着替えてくる」
自室へと向かう颯真を花那は複雑な気持ちで見つめていた。結婚当初から鍵の掛けられている彼の部屋に、あのメッセージの主は入ったことがあるのだろうか?
いっそ問い詰めればスッキリするのかもしれないのに、そう出来ないのは花那が契約結婚で結ばれた妻と言う立場だからかもしれない。
すでに契約期間は過ぎてしまってる、もし記憶が戻ったことを知れば颯真さんは私と……
そう何度も考えて、結局花那は普段通りの態度を取って今を誤魔化すことしか出来ずにいた。そうする事で颯真の傍にいることのできる時間を少しでも伸ばすかのように……
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