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花那が自室へと戻ると机の上に置いていたスマホの画面が目についた。こんな時間にスマホのメッセージ通知が来るなんて珍しい、そう思って手に取ってみる。
「知らない番号……」
それだけで嫌な予感がする。昼間に送られたメッセージは颯真のスマホからだったが、その送り主はすでに花那のアドレスを知っている可能性が高い。
それならその女性が花那に攻撃してくる可能性は少なくないはずだ。つばを飲み込み覚悟を決めてスマホのメッセージフォルダを確認する。
『颯真さんと今すぐ別れて! 彼はあなたと離婚して私と一緒になりたいと言ってるの。颯真さんにとって邪魔なだけよ、愛してない妻なんて』
「……ひどい、どうしてこんな事を」
あえて花那が傷付くような言葉を選んでいるとしか思えない。愛されてない事はちゃんと分ってる、颯真にとって花那がさほど必要とされない現状も。
だからと言って……邪魔だとまで思われているなんて考えたくなかった。
さっき触れてくれた颯真の手は冷たかったが、とても優しかった。まるで壊れ物にでも触れるように花那の頬を撫でた。
このメッセージが事実なら、颯真はそんな風に自分に触れるはずはない。花那はそう自分に言い聞かせメッセージを削除して送り主のアドレスをブロックする。
スマホの電源を落としベッドに入ったが、その夜遅くまで花那は眠りに付けないままだった。
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