変えられない現実に

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   昨夜あまり眠れなかった花那(かな)は少し早い時間からキッチンで朝食の準備をしていた。何かしていた方が気が紛れる、そう思っての事だったのだが。   「……あら?」  颯真(そうま)の部屋からだろうか、何か話声が聞こえてくる。普段この時間彼は寝ているはずなのに。不思議に思って花那は颯真の部屋の扉をノックする、するとすぐに颯真が顔を出して…… 「病院から緊急の呼び出しなんだ、すぐに行かなければいけない。こんなこと滅多にないのに……」  困ったような顔をする颯真に花那は自分も準備を手伝うと言って、彼を洗面所へと向かわせた。彼と過ごしてきた五年間、少なくともこんな急な呼び出しは無かった気がする。  昨日のメッセージの事も引っかかったまま、モヤモヤする気持ちはどんどん大きく育っていく。 「朝食も食べれないわよね、それなら……」  花那は冷蔵庫を開けて野菜とハムやチーズを取り出して、ササッとサンドイッチを作る。これなら空き時間にでも颯真が摘まむことが出来るだろう。  彼の鞄にそのサンドイッチを詰めた使い捨てのケースをお気に入りの布で包んで入れた。それだけでも自分に出来ることがあれば、そう思っての事だった。 「じゃあ、行ってくるよ」  玄関でいつも通りの言葉を残し、颯真は速足で勤務先へと向かう。そんな彼にサンドイッチの事を伝え忘れた事に気付いて、花那は自室に戻りスマホの電源を入れる。  メッセージさえ送っておけば気付いて食べてくれると思った、しかし…… 「……え?」  電源を入れて起動したのと同時に立て続けに受信されるメッセージ、それは花那のスマホの画面をすべて埋め尽くしても止まらなかった。  あまりの恐怖に、花那は思わず持っていたスマホを手から落としてしまう。
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