第二章 優しい言葉

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「でも、平さんのことは全く解らなかったな」  終始、料理の解説をしてくれた雅貴。  だが、ただ、それだけ。  自らを語ることは、一切なかった。 「多分。いや、絶対にお金持ちなんだろうけど」  この客室も、見事に豪華だ。  複雑な織りの絨毯に、北欧調の家具。  曲線の美しい、シャンデリア。  季節の感じられる、タペストリー。 「僕、夢を見てるんじゃないのかな」  本当の僕は、雨に濡れたまま気を失って、泥水の中に突っ伏しているんじゃないのかな。  そう思ったところで、ドアをノックする音が聞こえた。 「渡辺さんかな?」  ソファから立ち上がり、自らドアを開けたところには、何と雅貴が立っていた。 「平さん」 「解熱剤を、持ってきた」 「ありがとうございます」 「明日、医者にかかるといい」  お医者様、と藍はためらった。
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