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娘は1人でアパートに住んでいる。 私が再婚するのに、一緒に住むのはどうかと思い、 娘が高校を卒業するのと同時に 私は再婚。 娘はアパートでの一人暮らしを始めた。 いや、私がそうさせたのだ。 突然行ったら何ていうだろう。 いちお電話しとこう。 「もしもし?今から行っていい?」 「なんで?」 「ちょっと喧嘩した」 「いいけど」 「じゃ行くね」 なんていい子だろう。 この子は、最初の結婚のときの子だ。 今の3回目の結婚まで、2回の離婚や私が付き合った男性、 私のだらだらな日常をずっと見てきている。 高校3年間、私は1度もお弁当を作っていない。 母子家庭なのをいいことに、私立に行かせ、 娘にはアルバイトをさせて、携帯代や昼食代、すべて自分でまかなわせていた。 ひどい母親だ。 なのに文句も言わず、私と一緒にいてくれた。 なんていい子だろう! ただひとつ、 娘は片づけられない。 部屋が、ものすごく汚い。 これから行く部屋も、とんでもなく汚いのはわかっている。 本当は玄関先で失礼したいが、今日はそうもいかないな。 電車を降りて駅を出ると、ドーナツ屋がまだ開いていた。 お土産に買っていこう。 1人2個ずつ、4個買って、袋をぶらぶらさせながら歩いた。 5分くらいでアパートについた。5階まで階段をのぼり インターホンをならした。 すぐにドアが開いた。 「どしたの?」 「ドーナツ買ってきた。食べよ」 何を話したのか覚えていない。 ちょっと居づらくて出てきたけど、食べたら帰る、 そんなようなことを言ったんだと思う。 「じゃあ 帰るよ。またね」 「うん」 私は来た道を歩き始めた。 とりあえず、やつのいるマンションに帰るしかないかな。 マンションにつくと、私はそっとカギを開け、 やつが来ないことを確認してから、急いで自分の部屋に入った。 もう深夜1時を回っていた。
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