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終わりへ
「離婚届もらってこないとなぁ」
「明日、もらってくる……」
「ああ」
はぁ 何とか終わりにむかいそうだ。
何もされなくて良かった。
自分がこんなんだから悪いんだ。
病んでいなかったら、もっとお金持ってたら、やつを受け入れる余裕があったら、
やつが私を理解してくれたら、怖い面がなければ、にやついたりしなければ、パン1つで怒らなければ、こぶしが飛んでこなければ、
それくらいでいい。
全部やつのせいでいい。
2回も3回も同じだ。
これでいい。
朝になると、早速役所にいき、紙をもらってきた。
何度みてもペラペラだ。
婚姻届もペラペラだが、これは更に薄い気がする。
まさに、脆い夫婦を表すような紙切れだ。
婚姻届は2人で、幸せです!を振りまきながら、汚さないように、やぶれないように、
丁寧に出したもんだ。
離婚届は書いてさえあれば、まあいい。
きっと世の中そんなもんだろう。
うちに帰ると、さっと自分のところを書いた。
慣れたものだ。憂いも何もない。
悲しさもない。寂しさもない。
さあ、もう怖くなくなる!
爽快だ!
「ただいま」
優しい声だ。気味が悪い。
「紙、もらってきたから書いて」
「うん、わかったよ」
普通だ。本当に怖い。
次は何?
足が飛んでくる?
やつに凶器はいらないだろうから、
その手が、その口が、その目が、
恐怖でしかない。
やつは紙を完成させて、静かに渡してくれた。
「私が明日出しとく」
「うん、よろしく」
私は逃げるように、自分の部屋に入った。
こんな普通?
何だか平和。
離婚、するんだよね……
とにかく、やつに破られたりしないように、
明日まで隠しておこう。
1つ、無事に前へ進んだ。
翌朝、また元気な声が聞こえた。
「おはよー。いってきます」
うーん、優しい。
確かに出会った時は優しかった。
みんな最初は優しいんだった。
そんな当たり前を忘れてた。
だから、結婚してしまったんだ。
お互い様だ。歩み寄れずに終わりだ。
私は役所が開く時間に合わせるように
家を出て、ささっと出してきた。
よし。さあ、帰ろう。
まだ、やつが帰ってくるマンションへ。
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